デザイン?建築学系 中山 利恵 准教授が著書『「洗い」の日本建築史-建築の経年と木肌処理技術』において日本イコモス奨励賞と建築史学会賞を受賞しました。
日本イコモス奨励賞は、若手研究者の育成と研究の奨励を目的として、文化遺産の保存活用理念、保存活用活動、保存活用プロジェクトの前進に優れた業績をあげた者に授与される賞です(日本イコモスホームページより)。また、建築史学会賞は、建築史学の発展と水準の向上に寄与することを目的として、毎年、建築史学における優秀な個別業績に対し贈られる賞です(建築史学会ホームページより)。
中山准教授は2024年3月に著書『「洗い」の日本建築史-建築の経年と木肌処理技術』(東京大学出版会)を発表し、現在失われつつある「洗い」という日本の伝統的な木肌処理技術に着目し、その歴史を概観しています。このたびそれが高く評価され、2025年3月8日に日本イコモス奨励賞を、2025年4月19日に建築史学会賞を相次いで受賞しました。
【日本イコモス奨励賞 授賞理由から抜粋】
中山利恵氏は、従来の研究史においてあまり注目されてこなかった日本の木造建築に施された「洗い」技術とその領域の存在に着目し、研究成果を『「洗い」の日本建築史-建築の経年と木肌処理技術』(東京大学出版会 2024年)とし、日本建築史上にその存在を示した。本書では「洗い」という行為に留まることなく、それに続く「木肌削り出し」「洗清と清飽」「灰汁洗い」という各章の史料分析などにおいて、現場における詳細な施工の実態にも踏み込んだ解りやすい解説が加えられている。特に専門家にとっては、日本の伝統的な木造建築におけるオーセンティシティとは何かについて、歴史を踏まえた実証的調査に基づき、理念にとどまることなく示された問題提起には、改めて考えさせられる。
(中略)
本研究は、日本建築史における新たな領域を切り開いて間もないが、今後、伝統的な木造建築の保存再生において、考慮すべき重要な要素となる可能性を秘めている。さらに中山氏が建築史のみならず、建築の保存再生の実務者であることは、関連する文化財事業において、研究の成果を実践する担い手となり、一層の経験と活躍を期待するところである。
【建築史学会賞 授賞理由から抜粋】
本書は、従来看過されてきた日本建築の重要な一側面である「洗い」の実態を解明することでその技術継承を促しつつ、「清浄さ」と「古色」尊重という相反する美意識が併存する日本の建築文化を見直し、今後の歴史的建造物の保存のあり方にも一石を投じようとしている。その点において、日本建築史の今後の発展に寄与するものとして、建築史学会賞の授賞にふさわしい業績と認められる。
日本イコモス奨励賞授賞式と受賞後の講演の様子
建築史学会賞を授与される中山准教授(右)
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