分子化学系 外間進悟 助教らの研究グループは、炭素系ナノ材料であるカーボン量子ドット(CQD)注1)と蛍光ナノダイヤモンド(FND)注2)を融合させた新しいハイブリッド量子センサ、CQD-FNDを開発しました。
FNDは量子センサとして知られており、細胞内の温度?粘性?電場?ラジカルなどの物理化学量を計測可能な新しいナノセンサとして注目されています。本研究では、蛍光波長の異なるCQDをFNDにラベリングすることで、個々のFND粒子を色で識別できるようにし、それぞれ異なるパラメータ(例:温度と粘性など)を同時に検出する「多項目量子センシング」を実現可能な新型量子センサを開発しました。細胞や線虫(C. elegans)を用いた実験により、生体環境においても本センサが機能することも確認しており、今後、がんや神経疾患などの病態における細胞内物理環境の解明や、多項目モニタリングによる創薬研究への応用が期待されます。
図1. CQD-FNDの合成スキーム
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本研究成果は、炭素材料やナノテクノロジー分野における世界的に権威のある学術誌『Carbon』(Elsevier社、インパクトファクター:10.5)(外部リンク)に掲載されました。
<用語解説>
注1)カーボン量子ドット(CQD)
直径数ナノメートル程度の炭素ベースのナノ粒子で、励起波長に応じてさまざまな蛍光色を発する特性があります。粒子の大きさや構造、前駆物質の種類によって発光波長が制御可能で、バイオイメージングやバイオセンシングなど多用途に利用されています。光安定性が高く、低毒性であることから生物系への応用が進められています。
注2)蛍光ナノダイヤモンド(FND)
ナノスケールのダイヤモンド粒子で、内部に「窒素-空孔中心(NVセンタ)」と呼ばれる構造を持つことにより、蛍光を発する性質を持ちます。NVセンタ内部の量子状態を光で読み取ることが可能であり、温度や磁場、電場、ラジカルなどの物理化学量を非侵襲的に計測できる「量子センサ」として注目されています。生体適合性が高く、細胞内センシングやin vivo計測への応用が近年盛んに進められています。
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